判例、事例の紹介です
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ご参考にしてください。

これまでのケースが参考になるかもしれません。
このページでは、これまでに判断がくだされた内容を例としてご紹介していきます。もし、ご関心のある内容が含まれていれば、お話し合いをまとめる参考にできるかもしれません。随時、アップしていきますのでご利用下さい。(わかりやすくするため、適宜表現を変えている部分があります。)
子供が実力で・・・
いくら子供がかわいくても無理やり連れてきてしまうのは・・・
夫と妻の婚姻後,子供が誕生した。夫・妻は実は当時,大学3年,2年で,夫の両親宅に同居,夫の母の協力を得て,子育てをすることになった。こうした状況の中、妻と夫の母親とは少し折り合いが悪かった。妻の大学卒業後,夫妻は東京で暮らすことになった。その後結局,夫婦仲が悪くなり,結婚から6年ほど経過して別居,妻は離婚調停を申し立てた。夫は別居後両親宅に戻っているが,同年秋,突然,夫が保育園に現れ,保育士さんは止めようとしたものの力ずくで子どもを連れ去った。東京駅で取り戻そうとやってきた妻ともみ合った末,最後は力で連れていってしまい,妻の面会要求にも応じようとしない。妻は当然夫に対して子ども(6歳6ヵ月)の引渡しを請求した。妻は会社員で,つき合っている男性がいた。夫は外食産業に勤めているが、収入はあまり多くなく,両親宅に居住し,子どもの監護も祖母まかせの状態となっている。

こうした場合、どのように判断がされるのでしょうか。,離婚の調停が進んでいる中,別居中の夫婦の一方が子を監護,養育するのは当然そうなるでしょう。その場合に,もう一方がその子を実力をもって連れ去り,拘束するようなことは,決して許されてはならないと判断されました。それはこうした略取,拘束行為は,子の生命,身体を不測の危険にさらすことになるおそれがあります。また,現に監護,養育している者はもとより,広く社会に限りない不安と恐怖を与えることになります。離婚の事例はたくさんあり,夫婦間で子の取り合いが行われることもよくあります。その多くは監護,養育の現状に強い懸念と不安を抱いているにもかかわらず,略取,拘束行為はきわめて稀にしか起きることはありません,これは,多くの者が,理をわきまえ,激情を強く自制して良識ある行動をとっているからであると考えられます。このような見地に立って,この場合の略取,拘束行為をみると,連れ去り方の態様においても,その後の対応の点においても,違法性は強いといわざるをえないと結論づけられました。
母からの引渡請求を認めたのは,最高裁判例に従い,母である請求者に監護養育させる方が一般に,子どもの幸福にとって相当であるからと判断されます。ただ、この場合は,その判断過程の中で,拘束行為の態様が重視され,違法性が強いと指摘しています。
子供の幸せを一番考えての判断ではありますが、それにしても親のむりやりな行動は、結局は逆効果でもあるということですね。
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面接交渉
子供が拒否する面接交渉を認めました。
家族構成:夫・妻・息子(9歳)・娘(8歳)・祖母(夫の養母)

息子が誕生して養育が始まった頃から、おかしくなりました。祖母が息子の養育に関してかなり口出しをするようになりました。夫は祖母に同調することが多く、不信感から夫婦関係も悪化しました。
離婚調停から、別居に至り、夫、息子、娘、祖父母が一緒に暮らしている状態です。

息子には、実はアレルギーがあって、そのことについて祖母が「母が息子に腐った卵を食べさせたからこうなったんだよ。私も毒を飲まされたことがある。」などと話していた。息子はその言葉を信じ、母に対して強い反感を持っていました。妹は兄を信頼しており、同様の気持ちをもっています。

調停では、2人の子供のために母親と面接することが大事と考えたが、夫と祖母はそれに対して消極的、なおかつ2人の子供は面接を拒否するという状態です。

その後母としては、子供の監護者を母と定め、子供を引き渡すよう審判を求めました。

審判の結果は、現状での監護者の指定と引き渡しは、子供には動揺が大きく、また混乱をもたらすので、認められないとしました。しかし、子供の福祉のためにもっとも望ましい内容を定めることができると判断し、面接交渉を認めました。

母は、2人の子供の親権者であり、そもそも自由に面接できる立場にある。現に2人の子供を監護している父・祖父母には、母が子供の福祉を害さない範囲で面接することについては、妨害することは許されないのは当然である。しかし、子供は母と面接することを拒否しているので、実現はむずかしい。

しかし、2人の子供が今後長期的に見て、健全に成長し、年齢に応じた健全な人格形成をはかっていくためには、子供と実の母親の間の心的な信頼関係を回復することが不可欠である。

そのために、当面子供の学校の長期休業中に一定期間母方に宿泊し、祖母が立ち会わない形で面接を重ねていくことが適当であると考えられる。

そして、これを実現するために父および祖母が母親を敵視するような言動をとってはならないことはもちろん、子供の母に対する誤解をとかせ、母との面接に応じるよう働きかけていく必要がある。この働きかけは、2人の子供の健全な発育のために実行しなければならない責務である。としました。
面接交渉についての考え方は、この例にもあるように、子供のことを中心に考えます。このケースでは、ずっと母を誤解したままでは子供が健全に成長しないと考えています。そのままいって、おかしいなと感じたときには父や祖母に対する不信感が、母に対する以上に増幅するかもしれません。離婚については、夫妻がそれぞれの立場で交渉することが主ですが、面接交渉については、子供を中心において、お話しなさってはいかがでしょうか。

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財産分与の扶養的要素
財産分与には2つの意味があります。
年齢75歳の妻は17年間別居生活後、離婚することになった。
そもそも別居の原因は、会社社長である夫が別居の10年くらい前に別の女性との間に子供をもうけ、その女性と夫が暮らすことになったことによる。
ここ4年ほどは、婚姻費用も受け取っていない。

離婚によって婚姻費用の分担を受けることもなくなり、老後を不安の中生活することになる。
この場合は、扶養的要素を認め財産分与として1,200万円を支払うべきと判断した。さらに有責性の程度などから、慰謝料の支払いも命じられた。
財産分与には、2つの意味があります。よく知られているのは、婚姻後に共同で築きあげた財産の精算的要素です。実はもう一つの意味があって、あくまでも精算的要素の補助的な役割ではありますが、扶養的要素で認められる場合があります。上の場合がこの例です。いろいろ条件がありますが、離婚協議書に反映させることもお考えになってはいかがでしょうか。
この例では、高齢である場合、主婦として長い間家事労働を担当していれば、離婚後、経済的に自立することは困難、かつ再婚の可能性も少ないことから要扶養性が認められるたのですね。

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分与する側の扶養能力は?
共有財産の精算という意味合いの場合とは、少し扱いが異なります。
夫婦の共有財産の精算という意味合いの場合、財産がなければ、財産分与は認められません。

離婚後扶養でかんがえた場合は、そうした制限はありません。たとえ、婚姻前からの資産であっても、相続や贈与によって取得したものであっても、制約はなく、分与義務者に扶養能力があるかどうかが問題となります。
逆にいえば、無資力であれば、認められないということですね。

そういう意味では、請求はもちろんするべきだとは思いますが、扶養義務者が生活できないというような状況は避けなければなりません。そこで、それを考慮した額の決定や期間の限定を考えたりするべきです。

ここで大事なことは、要扶養性や扶養能力は、長期間ずっと同じ状況ではないこともあります。そのことも考えて、決定することが大事ですね。もちろんその手だても取っておく必要がありますね。

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養育費負担は親権者が先?
離婚後に、父が養育費を請求されました。自分は親権も渡した。養育費は親権者になった親がまず負担すべきだと主張しました。
「親権者の監護・養育の権利義務と、
それに必要な費用(養育費)の負担とは別個の問題であり、未成熟子に対する親の生活保持義務は親子関係そのものから生じるものであるから、離婚後においても両親は親権の有無に関わらず、それぞれの資力に応じてこの養育費を負担すべき義務を負うものと言わなければならない」
と判断されました。
民法877条に離婚後も父母は、未成熟子に対して扶養義務を負うと規定されています。

同居しているかどうか、また、親権があるかないかということには関係なく扶養の義務があるということですね。では、親権者とそうでない親とどちらが先に?それも親権者であっても監護者であっても、そしてそうでなくても関係ないということです。お互いの話し合いの段階からそのような意識で望みましょう。

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親権者の変更は難しい!
子供の親権者である父が再婚することになりました。
これは、大変と母が親権者となるよう変更の申し立てをしました。
こんな場合はどうでしょうか。
親権者の変更は、子どもの事情を中心に考えられます。
とすると、単に親権者である親が再婚するからというだけでは、
変更は認められません。
子どもにとって一番良い状況を作るために、どうしても親権者を変更することが必要という理由がいります。もう少し、子どもの事情を考えてみなければなりません。

もともと、父が親権者であって母が監護者であるという場合に、父が再婚し、子供も生まれたので、養育費を送金することを約束の上、親権者を母親にしたという例はあります。

また、父親が親権者であるが、母親が子どもを引き取って再婚し、そのまま子どもは平穏に暮らしている状態です。そのままの環境を続けることが、子どもにとって一番良いと判断され、母親を親権者に変更したというような例もあります。
いずれにせよ、親権者の変更は容易ではないと考えておくべきでしょう。
特に親の考えや事情だけでは、まず難しいので、離婚の前によく考えて決定しておく必要があります。くれぐれも一時的な感情では決めないで、書面に反映させましょう。


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親権者である母が死亡
離婚後、子供の親権者となっていた母親が死亡しました。
そこで、父親が親権者を自分に変更するように家庭裁判所に申し立てました。
これに対して、事実上養育監護をしている母方の祖父からは、後見開始を理由とする後見人選任の申し立てがなされました。
審判となりましたが結果はどうなったでしょうか?

父は、自分の両親ともう1人の子供の4人暮らし。経済的にも安定した生活を送っています。その子供は主に父方の祖母が世話をしているが、祖母は健康上問題なくもう1人の子供を引き取ることも希望していました。

母方の祖父は、妻と対象の子供、母の弟、その子供2人と生活。主な収入源は、母の弟でした。子供3人の養育監護の負担はそれなりに重いものと考えられます。
仮に、対象の子供が父に引き取られたとしても、年齢が5歳ということもあって、生活環境の変化には順応できると思われます。何より実の父や兄弟と暮らすことは、良いことと考えられます。

そこで、父に対象の子供の養育監護のを任せた方が本人のために良いと判断され、親権者変更の申し立てを認め、後見人選任の申し立てを棄却することになりました。
常に現状維持が重視されるわけでもないようです。子どもにとっての環境を比較して決定がされるようです。絶対というものはないでしょうが、将来をよりよく推測される材料が大切なようです。

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親権者である父が死亡
離婚後、父が親権者として子供を引き取りました。
ところが、その父が死亡してしまいました。子供は、事実上、父方の祖父母に養育されています。祖父母は自分たちを子供の後見人にする審判を申し立てました。母は親権者を自分に変更するよう申し立てました。

母は、離婚後職業を転々と変えましたが、紡績工場に就職し寮生活を送っています。その状態では子供の養育監護は難しい状況です。残念ながら実家の協力も得られない状態でした。父の祖父母は、対象の子供を非常にかわいがり、養子に迎えて跡を継がせたいとも考えています。さらには、親権者が母になったとしても子供を養育監護したいとも考えています。

一般に、離婚後親権者である親が死亡した場合、もう一方の親を親権者と決めることが子供の福祉のためと考えられ、親権者の変更が認められる場合が多いのですが、今回の場合は、仮に母が親権者として適当と判断されても監護者としては父方の祖父母を指定するのが子供のためと考えられ、母の申し立てが棄却されました。
上の2つの例を見ても、たとえ親権者が死亡したという特殊な原因があったとしても、単純には結論は出ないということがわかりますね。どちらの例でも子どもが中心として考えられ、子どもを取り巻く環境を重視していることがよくわかります。

話し合いを書面にまとめる段階でも、やはり、自分はどのような環境を作れるのかをよく考えて、書面に反映してはいかがでしょうか。

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